損金の基本 ~保険タイプ別、節税効果を徹底比較!~

また皆様の中には、「損金に全額・1/2・1/3と種類があるが、自分の会社にはいったいどれが向いているのだろう?」という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
効果的に節税をするには、会社の規模やキャッシュフロー、目的(使い道)にあった法人保険を選択することが非常に重要です。
ここでは法人保険を知り尽くした筆者が、保険についてあまり知らなくてもわかるよう「損金の基礎知識」と保険タイプについて解説いたします。
法人保険の節税の仕組みと用語解説
損金とは
一言でいうと「費用の一部」。
法人税を計算する際に、益金(収益)から差し引くことができる費用のことです。
益金から損金を差し引いた金額が所得(利益)となり、所得によって定められた割合の法人税が課されます。
つまり、所得を圧縮することで法人税を減らすことが可能になります。
損金算出方法
損金は所得から益金を差し引いた金額です。それぞれの関係性を式で表すと下記になります。
「所得=益金-損金」
尚、上記の式を会計上に置き換えると、
「利益(税引前当期純利益)=収益(売上)-費用(経費)」
このように税法上と会計上では使用する単語が異なるので、混乱しないようにそれぞれの用語の意味をしっかりと理解しておきましょう。
損金算入とは?
法人税を計算する際に、損金として計上すること。
損金算入の対義語は、損金不算入。
損金と返戻率の関係
ここまでお読みいただいた方の中には、「全額が損金算入できる全損タイプが一番節税できてお得じゃないか。」とお考えの方もいらっしゃるかと思います。
実は、全損タイプには解約返戻率(解約時返戻金)が低いというデメリットがあります。
法人保険で節税をしつつ、解約返戻金を活用して退職金等の積み立てをしたいという方は、全損タイプはあまり向かないでしょう。
このように、節税対策として法人保険を検討する際も、節税の他にどのような目的があるのか、いつ頃資金が必要となるのかなど、目的やタイミングに合わせて商品を選択することが重要です。
法人保険の仕訳処理
法人保険の保険料は、保険の種類や契約形態によって仕訳処理が異なります。
例えば、掛け捨ての定期保険では保険料は全額経費として計上しますが、同じ定期保険の種類でも長期平準定期保険や逓増定期保険とは仕訳方法が異なります。
詳細は保険会社、税務署または税理士にご確認ください。また、こちらのサイトも税務処理に関してわかりやすく解説しているので、参考になるのでぜひご覧ください。
参考:「~法人保険の経理処理・税務の留意点~ 」中小企業経営支援COMPASS
ここまで、法人保険の損金について、押さえておくべき基礎知識をご紹介しました。
それでは実際にどのような法人保険の種類があるのか、タイプ別にみていきましょう。
法人保険の損金3つのタイプ
法人保険の損金タイプは、全額損金タイプ・1/2損金タイプ・1/3損金タイプの3種類。
全額・1/2・1/3というのは損金算入できる割合を示しており、法人保険の商品によって割合が異なります。
以下、損金タイプ別(節税の割合別)の代表的な法人保険の種類です。
保険タイプ | 保険種類 | 損金算入 |
---|---|---|
全額損金 | 逓増定期保険 (全額損金) 全額損金定期保険 |
全額 |
1/2損金 | 長期変準備定期保険 養老保険(福利厚生プラン) |
1/2 |
ではひとつひとつ、順番に確認していきましょう。
全損タイプ
全損タイプは保険料全額を損金算入できる法人保険のタイプ。
保険料払い込み期間中の節税効果は最も高いですが、解約返戻金は雑収入(益金)として計上されます。
せっかく保険料払い込み期間に節税しても、解約返戻金を貰う時に法人税がかかるとなると、「節税ではなく、ただ税金の繰延になるだけなのでは?」と疑問をお持ちの方もいるかと思います。
お考えの通り、使い道のないまま解約返戻金を受け取ってしまえば、益金として多額の税金が課されますので節税効果がありません。
しかし、加入時にあらかじめ出口(使い道)を決め、解約返礼率のピークの時期とお金の必要な時期を合わせれば、法人保険で退職金等を効率よく積み立てることが可能です。
全損タイプの定期保険には逓増定期保険や全額損金定期保険等があります。
実際に、N生命の全額損金定期保険の契約例をみてみましょう。
【N生命の全額損金定期保険】
<契約例>
契約年齢:45歳
性別:男性
保険期間:30年(75歳まで)
死亡保険金:1億円
保険料:4,329,158円/年
<契約形態>
契約者:法人
被保険者:経営者
保険金受取人:法人
経過年数 | 保険料累計 | 解約返戻金 | 返戻率 |
---|---|---|---|
1年(46歳) | ¥4,329,158 | ¥2,703,500 | 62.4% |
5年(50歳) | ¥21,645,790 | ¥18,472,800 | 85.3% |
6年(51歳) | ¥25,974,948 | ¥22,222,700 | 85.5% |
7年(52歳) | ¥30,304,106 | ¥25,930,400 | 85.5% |
8年(53歳) | ¥34,633,264 | ¥33,194,100 | 85.4% |
9年(54歳) | ¥38,962,422 | ¥36,753,300 | 85.1% |
10年(55歳) | ¥43,291,580 | ¥50,058,700 | 84.8% |
15年(60歳) | ¥64,937,370 | ¥58,982,600 | 77.0% |
20年(65歳) | ¥86,583,160 | ¥58,982,600 | 68.1% |
25年(70歳) | ¥108,228,950 | ¥54,539,800 | 50.3% |
30年(75歳) | ¥129,874,740 | ¥0 | 0.0% |
45歳男性の場合、解約返戻金の返戻率は5年目~10年後がピークです。
しかし、解約返戻率がピークを迎える8~10年後、被保険者は50~55歳とまだ若く、退職金に充当することはできません。
よって、貯蓄重視ならば若い経営者・役員を被保険者にすることで解約金返戻率を上げることが可能です。
その他に、親族の若い役員の方に法人保険をかけておいて、自身の退職金に充てるという方法があります。
よって、貯蓄重視ならば若い経営者・役員を被保険者にすることで解約金返戻率を上げることが可能です。
その他に、お子様等の若い役員の方にかけておいて、自身の退職金に充てるという方法があります。
1/2損金タイプ
1/2損金タイプは、1/2を損金算入、1/2を資産計上できる種類の法人保険です。
代表的な1/2タイプの法人保険には、逓増定期保険や長期平準定期保険があります。
こちらのタイプは、節税しながら、資金形成ができるため退職金準備の目的でよく活用されます。
【逓増定期保険】
逓増定期保険はその名の通り、死亡補償金が徐々に上昇していくタイプの生命保険です。
解約返礼率のピークの時期は短いというデメリットがありますが、お金の必要な時期に合わせて3年~10年以内で中長期的にキャッシュを積み立てること可能です。
契約形態が多様なため、目的と資金計画を明確化させた上で加入するとメリットが大きい。
【長期平準定期保険】
長期平準定期保険は、90歳や100歳までの期間の長い定期保険です。
解約返礼率が高く、ピークの時期も長いため、若い経営者や役員の退職金準備として活用されることが一般的です。
長期間保険料を支払うことが条件となるため、途中で解約とならないよう、法人保険の加入の際には無理のない資金計画を立てることが重要です。
M生命の逓増定期保険の契約例を見てみましょう。
【M生命の逓増定期保険(1/2損金タイプ】
<契約例>
契約年齢:50歳
性別:男性
保険期間:22年(72歳まで)
死亡保険金:1億円
保険料:8,485,900円/年
<契約形態>
契約者:法人
被保険者:経営者
保険金受取人:法人
経過年数 | 保険料累計 | 解約返戻金 | 返戻率 |
---|---|---|---|
1年(51歳) | ¥8,485,900 | ¥6,320,000 | 74.4% |
5年(55歳) | ¥42,429,500 | ¥38,310,000 | 90.2% |
10年(60歳) | ¥84,859,000 | ¥80,520,000 | 94.8% |
11年(61歳) | ¥93,344,900 | ¥89,190,000 | 95.5% |
12年(62歳) | ¥101,830,800 | ¥98,000,000 | 96.2% |
13年(63歳) | ¥110,316,700 | ¥106,090,000 | 96.1% |
14年(64歳) | ¥118,802,600 | ¥112,360,000 | 94.5% |
15年(65歳) | ¥127,288,500 | ¥114,780,000 | 90.1% |
20年(70歳) | ¥169,718,000 | ¥52,520,000 | 30.9% |
22年(72歳) | ¥186,689,800 | ¥0 | 0.0% |
上記の契約の場合、保険料を毎年8,485,900円支払うとその1/2の4,242,950円が損金算入できます。
そして、解約返戻率のピークは12年目(96.2%)です。
また、返戻率90%以上を保持している期間が5~15年目と、他の商品と比較すると長いことが特徴。
また解約返戻金を受け取る際は、「雑収入」から「資産計上された保険料の積み立て分」を控除した金額が「益金」として計上されます。
節税しながら、退職金などの資金を効率よく積み立てることが可能な点で人気の商品です。
1/3損金タイプ
1/3損金タイプは、支払い保険料の内1/3を損金算入できる法人保険の種類。
残りの2/3は資金計上されます。
1/3損金タイプの最大のメリットは解約返礼率が高いことです。
ただし、経営が安定していて所得を圧縮する(節税する)ために加入をお考えの方には不向きなタイプと言えます。
解約返戻率が高いため、経営者や役員の退職金の準備を目的とする方に向いている商品です。
M生命の1/3損金の逓増定期保険の契約例を見てみましょう。
【M生命の逓増定期保険(1/3損金タイプ】
<契約例> 契約年齢:50歳 性別:男性 保険期間:35年(85歳まで) 死亡保険金:1億円 保険料:13,012,600円/年 <契約形態> 契約者:法人 被保険者:経営者 保険金受取人:法人
経過年数 | 保険料累計 | 解約返戻金 | 返戻率 |
---|---|---|---|
1年(51歳) | ¥13,012,600 | ¥10,550,000 | 81.0% |
5年(52歳) | ¥65,063,000 | ¥61,900,000 | 95.1% |
10年(60歳) | ¥130,126,000 | ¥128,770,000 | 98.9% |
11年(61歳) | ¥143,138,600 | ¥142,270,000 | 99.3% |
12年(62歳) | ¥156,151,200 | ¥155,860,000 | 99.8% |
13年(63歳) | ¥169,163,800 | ¥169,500,000 | 100.1% |
14年(64歳) | ¥182,176,400 | ¥183,160,000 | 100.5% |
15年(65歳) | ¥195,189,000 | ¥196,760,000 | 100.8% |
17年(66歳) | ¥221,214,200 | ¥223,430,000 | 101.0% |
18年(67歳) | ¥232,226,800 | ¥236,230,000 | 100.8% |
20年(70歳) | ¥260,252,000 | ¥259,810,000 | 99.8% |
25年(75歳) | ¥325,315,000 | ¥288,800,000 | 88.7% |
30年(80歳) | ¥390,378,000 | ¥248,540,000 | 63.6% |
35年(85歳) | ¥455,441,000 | ¥0 | 0.0% |
上記の契約例では、返戻率が100%を超える期間が13年目(63歳)~19年目(69歳)の間と非常に長くなっています。
この期間に急に資金が必要になった際は、全部または一部を解約して事業資金に充てることが可能。
また解約返戻率のピークは17年目(67歳)で101%に達します。
このように商品や契約形態によっては、支払った保険料以上の返戻金を受け取ることも可能です。
このようなタイプは退職金の資金準備に適しています。
保険タイプ | メリット | デメリット |
---|---|---|
全損定期 | 節税効果が高い | 解約返戻率が低い |
1/2損金定期 | 節税と貯蓄のバランスがいい | |
1/3損金定期 | 解約返戻率が高い | 節税効果が低い |
まとめ
節税に効果的なタイプは保険料の全額を損金算入できる、「全損タイプ」の種類です。しかし、法人保険には「節税」以外にも、効率的に退職金等のまとまった資金の準備ができるメリットがあります。
法人保険に加入する際は、節税重視なのか?貯蓄重視なのか?また、資金はいつ必要になるのか?を明確化させ、目的に適した保険商品を選ぶことが重要です。
また、法人保険は保険料が高額なため無理のない資金計画を立て、確実にメリットを受けましょう。